ブルゴーニュの日本人醸造家 仲田晃司

2018年08月01日
ワインのあれこれ

NHKドキュメンタリー「プロフェッショナル 仕事の流儀」

少し前になってしまいまいましたが、NHKのドキュメント番組「プロフェッショナル仕事の流儀」でワイン醸造家仲田晃司さんが特集されました。ワインの聖地フランス、ブルゴーニュで日本人がワインを造るのは仲田さんが初めてであり、その名は世界に知られるところとなっています。

仲田さんがワインと出会ったのはは大学生の時のこと。当時、レストランでアルバイトをしていたそうですが、そこでワインに出会い、「将来は自分の手で美味しいワインを作ってみたい」という思いを抱くようになり、ワインの聖地、ブルゴーニュへ渡ります。ただ、その道のりは順調とは言えず、日本人への差別、ワインの売れない時代など様々な試練が待っていました。
そんな苦しい時、仲田さんは「 いつだって人生は楽しい!」を信条に前向きに明るく常に笑顔で困難に立ち向かいます。そして、ブルゴーニュワインの神様アンリ・ジャイエに薫陶を受け、流行に流されない、自分が美味しいと思うワインを造ることで、世界から認められていくようになりました。

 

 

マルコタージュ???

番組では、樹齢110年のアリゴテ種が植えられてる畑を譲り受け、仲田さんが畑仕事に勤しむ模様が映されます。普通であれば、樹齢と共に収量が減る樹は抜くことが常識ですが、ここで仲田さんは敢えて抜かず、マルコタージュという仕立て方をアリゴテに施術します。ソムリエ試験でも聞かないマルコタージュとは何でしょうか。

「マルコタージュ (marcottage)」は、フランスでは特別なワイン専門用語ではなく、ごく普通の園芸に使われる用語で「取り木」と訳します。 葡萄の伸びた枝の一部を土の中に埋め、根付させてから、子木が十分大きくなった後、親木と切り離し繁殖させる仕立て法です 。1800年代後半に発生したフィロキセラの虫害により葡萄は壊滅的状況となります。その対処法として、フィロキセラに耐性があるアメリカ産品種の台木に接ぎ木をすることで難を逃れました。そのような中、フィロキセラに負けなかった一部の葡萄樹を繁殖させるために採用されていたのが、この“マルコタージュ=取り木”という栽培方法です。

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「すべてがワインに出る」

この仲田さんのアリゴテがフィロキセラ害に侵されていない非アメリカ台木かどうかは、番組内で知ることはできませんでしたが、理由はどうあれ仲田さんがこのアリゴテの質の高さを感じ取り、抜くことなくマルコタージュによって古木を増やそうと決断します。この選択はマルコタージュにより除草等の畑での作業が増えること、収量の増加はしばらく見込めないなどデメリットが多い困難な道といえます。それでもいい葡萄を得るため、いいワインを造るため困難の道を選ぶのが仲田さんの仕事ということでしょう。

番組後半では、マルサネ村の赤品種ピノ・ノワールの収穫時期を巡り、仲田さん夫婦で喧嘩が始まります。雨が降りそうですぐにでも収穫したい奥さんと、種の完熟を待つため収穫を遅らせたい仲田さん。仲田さんは最終的に赤ワインを造ることを断念し、安いロゼに落としてワインを造ることを決断します。収入が減ることをわかっていても、葡萄をすべて表現し、美味しいワインを造るエピソードです。この2017のマルサネ・ロゼはあっという間に売り切れると思いますが、飲んでみたいものです・・・

「すべてがワインに出る」とは仲田さんの言葉。全てをワインに捧げる姿勢が番組内で紹介されていきます。そして番組の肝といえる「プロフェッショナルとは?」との問いにこう答えます。

プロフェッショナルとは?

「自分の仕事をどこまで突き詰めて良いものができるか、究極にやっていける人。

そのためには情熱、愛情を持っていなければいけない。」

 

最後の言葉は仲田さんの屈託のない優しい笑顔とは裏腹に、仕事に対する厳しい姿勢が垣間見えた瞬間でした。

 

 

ワインのご紹介

「スタジオジブリ」と「ルー・デュモン(仲田さんのワインブランド名)」のコラボレーション企画ワインをご紹介します。スタジオジブリのプロデューサーであり、書家としても活躍中の鈴木敏夫氏が、ラベルを手がけました。ワインは、仲田さんの友人が醸造長を務めるブルゴーニュのネゴシアン(ワイン商)が造った南仏(IGP Pays d’Oc)産のピノ・ノワールとシャルドネです。
味わいはブルゴーニュに比べるとフルーティーで、タンニンがあり、ボディも大きく仕上がってると思います。

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左:ルー・デュモン (スタジオジブリ・コラボレーション)ピノ・ノワール
右:ルー・デュモン (スタジオジブリ・コラボレーション)  シャルドネ